第68回定演指揮者インタビュー 碇山隆一郎先生に聞く
来る4月25日(日)に予定されている第68回定期演奏会の指揮をお願いしている碇山隆一郎先生。区民響では新型コロナウィルス感染症が一段落した昨年9月から、本年2月21日に予定していた第67回定演に向けた練習を再開。碇山先生の指導を受けながら練習を重ねてきましたが、年明けの再度の緊急事態宣言を受け、第67回定期演奏会は残念ながら中止を決定。オーケストラの活動も本年1月から再度休止となりました。しかしながらその後4月25日にめぐろパーシモンホールで演奏会を実施することを計画。3月27日からの練習再開では本番までに練習できる回数が少ないことから、曲目は第67回で準備していた演目と同じとし、再度碇山先生に指揮を打診したところ、快諾していただきました。
碇山先生にはこれまで何度も練習の指導をお願いしてきましたが、本番を振ってもらうのは初めてです。そんな先生に、当団機関紙「Poco a Poco」編集部は突撃取材を試みました(笑)
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Q1. 鹿児島県喜界島ご出身とのことですが、幼少期~少年期は大自然に囲まれのびのびと過ごされたのではないでしょうか?
喜界島は隆起性サンゴ礁でできた海岸線長約50kmの小さな島です。実家は窓を開けると波の音が聞こえるほど海に近いところにあります。真夏でも海からの風が心地よく、波の音を聞きながら眠ったのを思い出します。休日はよく父の船に乗って魚釣りに行きました。
カツオやサワラ、カンパチ、タイ、カジキマグロといった本格的な魚釣りです。釣り場に向かう途中にクジラやイルカに出くわしたこともありました。今でも島に帰ると父と二人で魚釣り三昧。
上京後も父が釣った魚が実家から送られてきます。でも幼い頃は魚より肉派でしたので、正直に言うと僕は釣る専門でした。私の家系は漁師と大島紬の機織り職人でしたので、幼い頃から海は大好きでしたし、集落の人々が祖父の工場(こうば)に集まって機織りをしていたのを今でも鮮明に思い出します。
父は漁師と機織りの家系、母は教師の家系でしたので全く音楽とは無関係の家系に育ちましたが、幼少期の僕は姉二人がピアノ教室に通っていたのが羨ましくて母にお願いして通わせてもらったのがきっかけです。
小学生の頃は父の影響でゴルフに夢中になったり、中学生の頃は部活動のソフトテニスに夢中になったりなど音楽以外のことばかりやっていましたが、不思議なことにピアノを習うことをやめたいと思ったことは一度もありませんでした。もちろんピアノの練習は二の次になっていましたけど。
Q3.指揮者になろうと思ったきっかけはどんなことでしょうか?
高校進学の時に島の高校に通うこともできましたが、子供ながらに何か新しいことにチャレンジしたくて島を出る決意をしました。幼少期からピアノに加えてエレクトーンを習っていましたので、音楽の道を歩む決意をし、単身静岡の浜松にある音楽高校に進学することに決めました。
浜松には大きなコンサートホールがありましたので、16歳にして人生初のオーケストラコンサートを体験します。当時、島人の僕はコンサートホールに行ったこともないですし、オーケストラなんて見たことも聴いたこともありませんでした。エレクトーンでもクラシック音楽を演奏していましたが、初めて聴くオーケストラの生音に感激し、それをまとめている指揮者がかっこよく羨ましく見えたのを覚えています。そしてすぐに指揮者になる決意をし、大学の講習会に申し込み、そこで指揮の先生に「レッスンをお願いします」と直談判をしました。
Q4.2019年までドイツを拠点に活動されていたとのことですが、ドイツ滞在中の苦労話や忘れられないエピソードなど教えてください。
留学を決意した当時、私は28歳でした。最初の2年間はどこの大学を受験しても受からず涙ばかり流していました。ドイツの大学で学ぶには年齢制限がありましたので私の年齢ではギリギリでしたし、音楽能力の不足や語学力の不足などいろいろな部分が足りず悔しい思いばかりしていました。必死に音楽能力を上げて語学を勉強して、ビザの期限もありましたので、「これで最後、受からなかったら日本に帰る」と思って受けた大学で僕を拾ってくれたのは女性アメリカ人合唱指揮者でした。とても厳しい先生でしたがその後2年間彼女のもとで必死に学び朝から晩まで音楽だけに費やしました。
また、ドイツのアマチュアオーケストラや合唱団は指揮者もオーディションで決めますので、私もいろんな団体に応募してオーケストラや室内楽を振りましたし、最後の1年間は2つの合唱団の指揮者として演奏活動をすることができました。
Q5.好きな音楽家や音楽作品とその理由を教えてください。
私はこの作曲家が好きとかはあまりありません。なぜかというと、それぞれの作曲家が残した作品にはそれぞれの良さがあるからです。
オーケストラの前に立つ前に長い時間をかけて準備します。その際に、それぞれの作品の中で作曲上素晴らしい部分や天才的で他の作曲家には無い響きを発見し、ピアノで弾いてその響きを自分の肌で感じた時、自身の中で興奮と感動が生まれます。その良さをどのように棒で表現しようかといつも考えています。
とはいってもやはりドイツ語圏の作品はかなり熱が入りますね。それは、ドイツ語という言葉を知っているからです。ドイツで一番学んだことは、言葉と音楽は強い関連性があるということです。言葉のリズム、フレーズ、イントネーションなどはその国の音楽にそのまま反映されているのです。私も4年間ドイツに住んでいましたので、ドイツ語の話し方は感覚として少しだけ身についたかなと思います。
指揮者の好き(得意)な作曲家や作品は、得意な言語によって大きく左右されることもあると思います。
Q6.オーケストラの練習中、心がけていることはどんなことでしょうか?
私がいつも指揮をする上で心がけていることは、音をよく聴くこと、言葉遣い、正しい姿勢で立つ、重心を落とすこと、深い呼吸、右手を絶対に止めないこと、基本的にはこの6つです。あとは、準備してきた音楽を表現し、鳴っている音との誤差を調整すること。これは音を聴いて瞬時に判断していることですので心がけていることというより指揮者の仕事というべきかもしれません。
Q7.音楽以外の趣味を教えてください。
以前はバイクに乗って釣りに行くのが趣味でした。最近はもっぱらキャンプですね。
キャンプといってもブッシュクラフトというジャンルを目指して日々勉強しています。ブッシュクラフトとは自然の中で生きる生活の知恵を身につけるということです。一人で野営場みたいなところにも行きますし、妻と飼い犬2匹でファミリーキャンプ場にも行きますし、いろいろ模索中です。
Q8.「新しい生活様式」に切り替わってから新たに始めたことなどはありますか?
残念ながら音楽家はテレワークができませんので、少しでも早く今の状況が良くなることを願うしかありません。しかし今後の演奏会様式もオンライン化していく部分が多くなると思いますので、半年ほど前から動画編集ソフトを使って編集作業の勉強もしています。
Q9.当団に対する印象を教えてください。
初めて練習でみなさんとご一緒したのは5、6年前だったと思います。
真摯に音楽と向き合い少しでも良い演奏をするために練習に励んでいる姿にいつも感謝しています。そして今回初めて定期演奏会でご一緒でき大変嬉しく思いますし、2月の演奏会に向けて毎回の練習がとても充実していると思います。
Q10.最後に今回のプログラムについてひとことお願いします(聴きどころなど)。
本来であれば演奏会は2時間のプログラムとなりますが、今回はコロナウイルスの影響で演奏会の時間も短縮しなければいけなくなりました。しかし良い方向に考えるとすれば、一つの作品に対していつも以上の時間をかけて練習することができます。今回演奏する作品の中でブラームスは私が学んだドイツの作曲家でもありますし、彼の叙情的でドラマティックな音楽はドイツの風景や香りを感じることができる素敵な作品だと思います。会場でしか感じることのできないオーケストラの感動をぜひ港北区民交響楽団の演奏で味わっていただければと思います。
先生、ご丁寧な回答ありがとうございました!
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